ごあいさつ:TEAと質的探究学会の幕開け

 この度、「TEAと質的探究学会 第1回大会」を開催します。TEAと質的探究学会は、複線径路等至性アプローチ(Trajectory Equifinality Approach)を用いた諸分野における質的探究を促進するとともに、関係者間の連帯協同によってその進歩を図ることを目的に、2022年3月に設立されました。現在、TEAを用いた研究は、その発生母体である心理学のみならず、保育学、社会学、社会福祉学、応用言語学、教育学、経営学など、多様な学問分野で展開されています。同年3月27日に開催された学会設立記念会では、150名を超える幅広い分野の研究者、実践者の方々にご参加頂き、TEAに関する関心の高さを再確認することができました。

 学会発展において年次大会の充実は、不可欠な要素です。言うまでもなく年次大会は、様々な専門性を有する研究者、実践者が同じ場所に集い、自身の研究を発信し、相互に対話する貴重な機会だからです。それぞれの専門は違っていても、共通の研究方法論を基軸にして参加者同士が議論するような年次大会は、数ある学会の中でも特徴的なのではないでしょうか。みなさんにとっても、この大会でしか顔を合わせることのない研究者、実践者との対話は、他学会の大会とは異なる有意義な時間となるはずです。

 第1回大会は、5つの魅力的な要素で構成されます。
(1)ヤーン・ヴァルシナー(Jaan Valsiner)先生(Aalborg University, Denmark)をお迎えして、大会記念講演を開催します。ご承知の通り、ヴァルシナー先生はTEAの礎を築いた方であり、本学会の幕開けに最もふさわしい方と言えます。
(2)複数の講習会/ワークショップを開催します。これからTEAを用いた研究を始めたい方、これまでの研究をより発展させたい方、研究ではなく実践にTEAを活かしてみたい方など、参加者の多様なニーズに応えることのできるような内容を用意します。
(3)ポスター発表の場を設けることで、発表者と参加者の相互交流を促します。現在、TEAを用いた研究を行っている方、どうぞ成果をご発表ください。
(4)コメントセッションを開催します。TEAを用いた研究発表を行って頂ける方を対象に、人数を限定して、安田裕子先生(学会長)、サトウタツヤ先生(編集委員長)から直接コメントしてもらうことで、研究のさらなる発展を促します。
(5)会員企画シンポジウムを開催します。会員のみなさまに自主的にテーマを設定して頂き、シンポジウムを運営して頂きます。特色ある企画をお待ちしています。

 同大会は、対面とオンライン、それぞれの良さを重視して開催します。現時点では、大会初日を対面で、大会二日目をオンラインで開催する予定です。ただし、COVID-19の状況によっては、大会初日もオンラインに変更することが考えられます。詳細は、この大会Webサイトで随時ご案内します。

 微力ではありますが、実り多き大会となるよう、大会実行委員一同、協力して準備を進めてまいります。皆様のご参加を心よりお待ち申し上げます。

TEAと質的探究学会 第1回大会実行委員長
中坪 史典(広島大学)